堕落した薬学生のお部屋

薬学部でとりあえず生き残ることに精一杯な女子大学生。留年したくない。

【読書感想】夏休み初日から人間の闇を一生分摂取してきた【黒い結婚白い結婚】

直木賞に選ばれた方の作品が入っている短編集ということで、試験明けの夏休み初日に読んでみることに。7人の作家さんの話が載っていましたが、私が読んだことのある方はいなかったのでどんな感じなんだろうなとわくわくして手に取った。

そのときは勉強が忙しくて本を読めていなかったので、リバビリも兼ねて短編集を選んだ。長編だと読みきれない気がしたから。

結果、3日で読み切った。私にしてはかなり早いです。

けど、結構暗くてなんか夏休み初日はもっと爽やかなのを読みたかったな〜というのが第一印象でした。

「暗い結婚」がテーマの短編が前半部にあって、そのあと後半部からは「白い結婚」がテーマの短編が続く構成だったけど、全体的に白黒両面あって、物語の切り口が暗い方に焦点を当てたのが前半部、明るい方に焦点を当てたのが後半部というふうに感じました。当たり前かもしれないけどやっぱり物事には闇の部分と光の部分があって、その人の捉え方次第で暗くも明るくも見えるものなんだよみたいな。でもこの短編集全体を通しては闇多めな感じだった気がする、、

墓場か、楽園か、というキャッチコピーだったけど、7作読んでみてこの2択ではない気がした。結婚生活、下から見るか、横から見るか、みたいなね。結婚って結局は他人と暮らすわけだから、その生活はいいことばかりとは言い難いし、その内容も黒寄りのグレーか、白寄りのグレーかの違いみたいな、、

語彙力が乏しくてうまく表現できずもどかしいね。

 

では一つずつ感想いきます。ネタバレありですのでこれから読む方はお気をつけて。

 

まずは黒い結婚4作。

ひとつめ。窪美澄さんの「水際の金魚」。この方の「夜に星を放つ」が第167回直木賞受賞作らしいですね。初めてこの方の作品を読みました。

いや暗かったね。闇闇闇でした。語り手のちょっと、いやけっこう上から目線な口調から滲み出る毒がドロドロしていて妙にリアルでした。というか、リアルすぎてなんか私自身も流れ弾を食らって毒にちょっとやられてしまった。こころが痛いよ。

物語の主人公はちづる。36歳。既婚。

物語の序盤で、ちづるが電車に乗り合わせたひとたちの左手薬指を見ながら、その人の人生を想像するシーンがある。ちづるは指輪のない女性を見つけると、トートバッグの中に水筒とランチボックスが見えて、「この人は朝食を一人で取り、会社でこの弁当を食べ、夕食も一人で食べて、一人で眠るんだろう。」と思って、「かすかに優越感に浸る」。性格悪いな~結婚指輪していないひとの弁当でそんな想像するの怖いんだけど。っていうかもし仮にその生活であったとしてもいいじゃん。いいじゃん!!とまさに図星で流れ弾をくらった私は思ったのでした。

登場人物が主に3人いたけどみんなあまり好きじゃなかった。少しだけ出てきた人たちもいやーな感じで、もうほんとに闇を詰め込んだ話でしたね。

 

ふたつめ。深沢潮さん「かっぱーん」。

婚活セミナーに通う中で、教祖様みたいな人のマッチングにより結婚相手が決められ、韓国に嫁ぐことになる主人公。宗教みを感じた。いまホットな話題ですね。やばい世界をのぞいてしまった感があるけど、こういう世界って割と近くにあるのかもなと思うとぞわっとする。主人公がすぐそこらへんにいる人を救いの神みたいに信じてしまうんだけど、追いつめられると人間だれしもこうなるんですかね。気を付けたいね。

 

みっつめ。木原音瀬さん「愛の結晶」。

語り手の裕貴は20代後半くらいの男性、結婚していて、娘がひとり。

全体的に会話メインで書かれていて、語り口調が大学生っぽくて読みやすい。実際に大学や高校の思い出話メインだし。と思って読んでいたら話の方向が急展開。この世界、科学が発展して男性が出産できる世界だった。さらには男女平等を掲げる政策により、男女交互に出産することで補助金がかなり出るらしい。

前半二作で人間のどろどろを見すぎてまさかSF展開が来るなんて思わなかった。この設定ではどうやら男性が出産したほうが生存率が高いらしく、メリットが多いようだが語り手の裕貴は納得いかない。高校時代の同級生たちが普通に受け入れているのを見て反発するものの、結局は妊娠することになる。しかし周囲の評判とは違って自分だけなぜかかなり辛く、切迫流産で入院することになる。このままおろしたい、と思うようになる。

このあたりかなり暗いけど、まだ希望が見えると思った。タイトルは「愛の結晶」だしね。親には感謝だね。

 

四つ目。中島京子の「家猫」

一作目から三作目にかけてはだんだん闇要素が薄まってきていたような気がしたんだけど、気のせいだったみたい。思いっきり闇を見ました。またしても登場人物がみんなやばいし、語り手が定まっていなくて三人それぞれの登場人物視点で話が移ろうから、もうね。自分目線のその人と、別の人から見たその人、両方の情報が集まるともう大変な人物像が浮かび上がってしまうよ。現実もこんなんなのかなあ。しらゆきひめ殺人事件とか、何者とか読んだ時と似たような感触があった。

あと、タイトルが「愛猫」で、読む前はかわいいにゃーんというイメージだったのに読んでみたらけっこう闇多めのダーク猫さんでしたね。泥棒猫って言葉を連想した。化け猫とかも言い出すしもう猫のかわいいイメージよりトラ寄りの闇要素もりもり猫さんのお話でした。

 

ここからは白い結婚。

5つめ。瀧羽麻子さん「シュークリーム」。

語り手は茉奈。29歳。恋人のシンジから結婚の申し出を受けたばかりだ。シンジはなんでも要領よくこなすタイプだが、ひとつ気になることがある。美味しいところだけ持っていくところである。シュークリームを食べるときに、甘いクリームだけなめて皮は残す。小説は最終章から読む。映画のエンドロールは見ない。そんなシンジに対してもやもやした気持ちを抱きながらも、小説の最後にはシンジの隠された努力が見えてほっこりハッピーエンド。「しっかりと手をつないで、ふたり一緒に走り出す」という文で締められる。明るい未来に向かって二人で歩んできそうな終わり方だけど、私はかなり不安な気持ちになった。いやいや、走って行って絶対ばてるって。疲れて、立ち止まって、気づいたら距離が離れていてもう修復不可能なくらい関係が壊れているパターンだと思う。私はシンジ無理です。どこが白い結婚よ。一寸先は闇とはまさにこのことでしょうと思わせられました。

 

6つめ。森美樹さん「ダーリンは女装家」。

高校生の頃の主人公、真歩はバンドのフロントマンである青人のとりこになっていた。そして25年後、40歳になった真歩は女装した青人に再開し、そのまま結婚することになる。

これだけでかなりインパクトのある導入だが、真歩にも事情がある。幼いころに父が女を作って家を出ており、認知症の母が介護施設で暮らしている。認知症の母は語る「結婚はいいものよ」というけれど,父との結婚生活は果たして幸せだったのか。

二つの結婚を描きながら、しあわせについて問いかける小説でしたね。

まだ闇の部分がチラ見えしていましたがかなり希望が見える白多めの話でよかった。

あと、文章がすごくきれい。

青人とウエディングドレスを選ぶシーン。青人が真歩の家族の迷惑になっているんじゃないか聞いたとき、結婚をあまり良く思わない兄の言葉を思い出し、言いよどむ真歩への青人の言葉から先の文章を引用する。

「理解してほしいとは言わないけど、目をつむってほしいというか。・・・無理かな」白だって千差万別。でも誰もジャッジしないし、どれも個性があってまばゆい。「ちょっと、ご都合主義ね」自虐的に、青人が笑った。「神様だって時々、まばたきするんじゃない?」

ガラス越しに差し込む西日に、ドレスがきらめく。ゆるやかな川のように長いリボン、さざなみのようなドレープ。誰がどれを着ても、優美さは平等だ。「その、まばたきの一瞬になれないかな」おとぎ話みたい、と可笑しくなりながら私は言った。

 

読みやすかったし、この方のほかの話も読んでみたい。

 

7つめ。成田名璃子さん「いつか、二人で」

伏線回収系でしたね。そうきたかーと思ったけど、勘のいい人は気づくと思う。最後の読後感はかなりよかったけど、途中に挟み込まれていたストーリーは全然ほっこり系じゃなかったよ。最後の雰囲気で白い結婚らしくなっているけど半ばはかなり闇だったよね。結婚生活で病んで途中死にかけているという点ではなんなら7作の中で一番闇に近い。今までの6作はいろいろもがき苦しみながらも自分が生きることが前提にあったからね。その根本を覆しかけたこの作品はかなり闇深めかなーと思いました。

 

長くなっちゃったけど感想は以上です。全体を通して、表面上は暗い話からだんだん明るい話になっていて、でも実際のところどうなんだろーなーとぼんやり考えるのが楽しかったですね。あと、これは読み手の経験と立場、そのときの状況でかなり捉え方が変わると思う。わたしなんでまだまともな恋愛していませんからね。他の人の感想も聞きたいしまた読み返したいけど今日はこの辺りで終わりにします。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

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